【Working Life with IDDM】 vol.03 パソコンの向こうに広がる、IDDMの仲間たちとの出会い

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「情報を得たい」 、から 「情報を発信したい」 へ PC の普及と共にたどった変遷

IDDM と診断されてインスリン注射を始めた頃に初めてパソコンを購入しました。まだワープロ全盛期だった会社でもっと効率的に仕事をするためのツールとするのが第一の理由でしたが、このパソコンを使ったパソコン通信で IDDM に関する情報収集と仲間作りを行なえるようになりました。

当時は Windows 95 が出たばかりでしたが、私はその前の Windows-3.1 からスタートしました。若い人には 「え? Windows-3.1 ?パソコン通信?何のこと?」 でしょうね。当時は現在のようにインターネットが普及しておらず、富士通系のニフティサーブや NEC 系のビッグローブなどの大手パソコンメーカーが運営するサイトに有線のアナログ電話回線でアクセスして今のウェブサイトにある掲示板のようなところで情報交換していたのが 「パソコン通信」 です。回線速度は現在の数百メガ~ギガ bps から見たら信じられないほど遅い 2400bps でした。百万倍遅いのですから想像できないですよね。アナログモデムを通して接続すると 「ピーヒャラヒャラヒャラカンカンカン」 と FAX を送るときと同じ音がしてサイトにつながりました。

当然ながらやりとりするのはテキストの文字情報のみ。
画像や動画など送受信できません。それでも、顔も見えずどこに住んでいるのかもわからない多くの IDDM の人たちとパソコンを通じてやりとりができることは画期的でした。それまでの情報収集の手段は、病院やクリニックに置いてある配布物や日本糖尿病協会の発行している月刊誌 「さかえ」 くらいでした。それでも 「さかえ」 を貪るように読んで全国には同じような悩みを持つ人がいることを知り、逆に自分からも情報発信したいと思うようになりました。そんな状況で出会ったパソコン通信は本当に画期的でした。
すぐに糖尿病のサイト (当時はフォーラムと呼んでいました) に登録して、いろいろな意見を読んだり情報を集めたりしていました。インスリンの打ち方や低血糖時の対応など様々なやりとりをする中で、実際に顔を見て話がしたいのでどこかで集まろうということになりました。いわゆる 「オフ会」 です。今では SNS を通じてすぐに人を集めることができますが、当時はスマホどころか携帯電話さえなくてポケベルが流行していた頃ですから、フォーラムで日時を確認したら当日までどんな人が来るのかわからずどきどきしました。

  

成人してから発症した仲間同士でつながれた喜び

パソコンで通信できるのはある程度以上の年齢で IT リテラシー (当時はこのような言葉もなかった) の高い人に限定されますから、落ち着いた大人の集まりでした。初めて自分以外の IDDM を持つ人達と話すことができたときの感動は今でも覚えています。小児発症の IDDM は当時からヤングの会があってそれなりのサポートがありましたが、大人になってから発症しても同じ経験を持つ人との接点がなく一人で悩んでいた人は多かったと思います。
パソコンがないか、あってもそれを使えなければ私もそのような一人になっていたと思いますが、幸いにもパソコンとネットワークを通じて仲間とつながる手段を発症当初から得た私は、一人で思い悩むことはありませんでした。それは今日 (こんにち) まで続いており、ここでこうして皆さんに自分の経験を伝えることができているのです。

しかし当時はほとんどの人がパソコンなど持っていない時代です。情報共有の大切さを強く感じていた私は、パソコン通信を知らない糖尿病患者の人々に対してパソコン通信を広めたいとの思いから 「さかえ」 に投稿しました。表題はまさに 「パソコン通信で糖尿病ネットワークを作ろう!」 です。 1995 年 10 月号の 「ひろば」 27 頁ですので、持っている方は読んでみてください。実は私もパソコンを始めた当初は日本のサイトに糖尿病のフォーラムがあることを知らず、どこかにないのか?とそこで問いかけたのです。これは私の前に 「さかえ」 で、パソコンを通じて主治医と患者がつながるネットワークがほしいという投稿をされた女性がいて、それを受けて投稿しました。その後はインターネットが急速に普及し 「さかえ」 でネットワークについて投稿することはありませんでしたが、誰かのきっかけになったとしたら幸いです。

  

国内外に拡げていったつながり。ついに自分でもネットワークを運営することに

私自身の IDDM の世界もパソコン通信によって大きく広がりました。海外の糖尿病サイトに出入りしていたら英語の得意な日本人女性の IDDM 患者と知り合ったり、九州のお医者さんと知り合って出張で博多に行ったときにオフ会を開催したりしました。その時に出会った仲間の一人が南昌江先生です。ご自身も子供の時に IDDM を発症しながら医師を目指し、現在は福岡で糖尿病専門のクリニックを開業されています。今年大阪で開かれたインスリンポンプサロンに講師として来られていたので 16 年ぶりにお会いしましたが、クリニックの院長として多忙を極める中、 SAP を付けてフルマラソンを完走されるほどのスーパーウーマンでした。
このようにしばらくは既存のフォーラムやサイトで情報を得たり仲間を作ったりしていましたが、やがて自分で IDDM のネットワークを運営するようになりました。詳しくは次回に。

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