東京大学とNTTがAIで糖尿病患者の通院中断を推定するシステムを開発、医療現場での実用化を目指す

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東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野および、東京大学医学部附属病院企画情報運営部 大江和彦教授らの研究グループと NTT が共同開発で人工知能(AI)を使って自分の判断で通院をやめてしまう「受診中断」の患者を推定するシステムを開発しました。

本モデルは患者行動に関連のある特徴量をもとに機械学習技術で構築し、受診中断を7割の精度で予測します。従来の研究では受診中断の要因が検討され、受診中断者の性別や年齢等の傾向は明らかにされていましたが、本モデルは積極的に支援すべき中断リスクの高い患者を個人の電子カルテデータを用いて抽出できるため、医師による患者への効率的な介入を支援することが可能となります。(出典:NTT ニュースリリース

 

病態悪化をAIが事前に防ぐ!優れた予測性能を発表

研究の背景として、糖尿病の進行(高血糖状態の持続)は合併症のリスクを高めたりQOLの低下が懸念されることから、治療の継続が重要となっています。しかしながら、糖尿病外来患者のおよそ1割が受診を止めてしまうことや、結果として病状が悪化して再び受診へと至るケースが課題とされてきました。

本モデルは、東大の医療データ分析や臨床における患者への指導に関する知見を参考に生成した特徴量と、NTT が 「corevo?」 で蓄積してきた AI 技術においての機械学習に関する知見をもとに誕生しました。予約不履行という、受診が途絶えるきっかけとなり得る予約外来の不受診と、受診中断リスク順位という、将来の受診中断日までの日数の長さによる患者の順位付けの2つを予測することを可能としています。

これにより、受診予約を直前で取り消しやすい人やだんだんと治療の意欲を失いやすい人を推定できるようになります。過去のデータでシステムの完成度を検証したところ、いずれも正解率が約7割に達したとのことです。

NTTによると2011年から2014年にかけて、東京大学医学部附属病院に糖尿病治療で通院している患者約900人の電子カルテデータを使用して同モデルにて評価した結果、優れた予測性能を発揮したと発表しています。

 

今後は他病院への展開も視野へ、医療現場での実用化を目指す

実際の臨床現場でこのシステムを利用すれば、通院をやめる可能性が高い患者さんに対し、予約日の前日に電話連絡を入れたり、来院時に声かけをするといった対策が可能になると期待されています。厚生労働省が認定した電子カルテデータの標準規格SS-MIX2が普及していることで、膨大な診療情報がAIで利活用できる基盤が整いつつある昨今。このSS-MIX2標準化ストレージに準拠していることで、今後は他の大学が保有するデータも使って精度を高めることで実用化を目指していきます。

医療現場で実用化が進むと、受診中断を避けるべく積極的に支援が必要な患者の絞り込み、支援を開始するべき時期の見極め、支援の程度の調整などといったことが可能になります。それらにより医師への診療支援、さらには患者の病態の維持・改善へも寄与することができると期待されています。

 

■ 出典

株式会社日本経済新聞  日本経済新聞

株式会社マイナビ マイナビニュース

日本電信電話株式会社 NTTニュースリリース

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