インスリン分解速度の遅い「耐性」を持つ長時間体内で循環・作用する人工インスリンの化学合成に成功

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糖尿病治療薬の応用に期待!持続型の人工インスリンの化学合成に成功

インスリンは2本の異なるポリペプチド鎖(A鎖・B鎖)が、硫黄原子(S)同士の「ジスフィルド(SS)結合」によって安定化されています。A鎖とB鎖を人工的に結び付ける従来の研究では、それぞれに含まれる硫黄同士が結合してしまいインスリンはうまく合成できなかったとのこと。東海大学では新規人工インスリン「セレノインスリン」の化学合成に成功したと発表しました。セレノインスリンは、天然のインスリンよりもインスリン分解酵素による分解速度が著しく遅いため、糖尿病治療薬としての応用に期待が持たれています。長時間体内で循環・作用する 「持効型」 の性質を持つと目されています。

一日に何度もインスリンを投与することは心身にも負担であり、そうしたなかで体内のインスリン分解酵素に対して顕著な分解耐性を持つ新規人工インスリンを開発したことで、将来的には患者の投薬負担を減らせることができる新規製剤開発につながるものと考えられています。分解耐性があるということは、分解されるまでの時間が長くかかるということであり、インスリン投与数を減らせる可能性が高いからです。

 

何よりも患者の負担を減する治療法となる期待

東海大学理学部化学科の荒井 堅太講師は、「持効型インスリンの開発研究はこれまで、天然のインスリンあるいはその類似製剤に追加処理を施して体内に循環する速度をコントロールする手法が主に用いられてきました。またインスリンは体内で合成される機構をまね、遺伝子組み換え技術を使った大腸菌や酵母にインスリンを発現させる手法が用いられてきました。今回、それ自体が持続性を持った新しいインスリン製剤を化学合成によって生み出せたことは、創薬の新たな一歩を開くものだと考えています。この製剤が実用化できれば患者さんの負担も大きく減らすことができると期待しています」 とコメントしています。

この研究は、同大学理学部の荒井堅太講師と岩岡道夫教授、東北大学多元物質科学研究所の稲葉謙次教授、大阪大学蛋白質研究所の北條裕信教授らの研究グループによって行われました。成果4月10日付けでドイツの国際化学誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に掲載されたとのことです。

 

■ 出典

東海大学 ニュース

アイティメディア株式会社 MONOist

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