新薬開発の加速に期待!名大が糖尿病治療薬メトホルミンの作用たんぱく質を発見

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2型糖尿病の治療薬として長い歴史を持ち、世界中で多く利用されている「メトホルミン」。この度、名古屋大学などの国際研究チームが、メトホルミンの作用するたんぱく質を発見したと発表しました。

細胞レベルでの薬の作用が明らかになったのは初であり、今回の研究成果は米国科学雑誌にも取り上げられています。

 

名大チームが明らかに メトホルミンが作用するたんぱく質「NHE」

経口投与薬メトホルミンは肝臓で新たな糖が作られるのを抑制すると同時に、筋肉への取り込みを促進します。そのため血糖値を下げる効果があると古くから知られてきました。1950年代の使用開始から世界で最も多く処方されている糖尿病治療薬です。

しかし、これまで数々の説が挙げられてきたものの、メトホルミンが細胞のどのたんぱく質に影響するのかは解明されてきませんでした。今回の研究は、まさにその原理が解明されたものであり、注目が集まっています。

 

名大のユ・ヨンジェ特任准教授らのチームは、脂肪や炭水化物、コレステロールなどを細胞に取り込んだり外に出したりする循環システムを担う、「NHE」と呼ばれるたんぱく質を特定しました。NHEは、細胞内のさまざまな物質の輸送や代謝の速度を微調整する役目を持つものだとしています。

これにより、ユ特任准教授は「メトホルミンは、NHEを介することで、糖尿病で弱った細胞内の物質輸送を強化しているのではないか」と語っています。

 

動物全体の共通メカニズム発見で、2型糖尿病治療薬の改善・新薬開発が加速

本実験は、寿命が短く生物学的なプロセスが観察しやすいミドリムシの一種、シーエレガンスを用いて行われました。研究チームはまずメトホルミンが飢餓状態におけるシーエレガンスの生存期間を短くすることを発見。遺伝子変異を引き起こしてこの現象を調べたところ、NHEを持たない個体ではメトホルミンが作用しないことが明らかとなりました。この結果は、NHEがメトホルミンの影響を受ける分子であり、飢餓状態のシーエレガンスの生存に関係していることを示しています。

また、線形動物のシーエレガンスとは進化上離れた存在である、昆虫のショウジョウバエでも同様の成果が得られたことから、メトホルミンがNHEに作用していると結論づけられました。さらに共通メカニズムの発見により、ヒトを含む動物全体でも同じことがいえる可能性が高いと考えられています。

 

今回の研究はメトホルミン作用の理解を深める上で、非常に重要なものだったといえます。今後は2型糖尿病治療薬の改良や新薬開発が加速するものと期待が寄せられてます。

 

■ 参考

株式会社朝日新聞社 朝日新聞デジタル
名古屋大学 公式リリース

 

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