糖質や脂質の摂取過多や、運動不足によるエネルギー消費不足が原因で中性脂肪は肝臓に蓄積していきます。医療情報サイト 「いしゃまち」 によると、正常な肝臓には 3～5 ％の中性脂肪が蓄えられていると言われますが、肝臓の細胞の 30 ％以上に中性脂肪がたまってしまった状態を脂肪肝と呼びます。
インスリン抵抗性により肝機能が低下する 2 型糖尿病患者は脂肪肝になりやすいと言われています。
ドイツの研究チーム、高たんぱく質食が 「非アルコール性脂肪肝」 を改善することを発表
10 月 17 日、ドイツの研究チームが米消化器病学会誌 「Gastroenterology」 オンライン版に、高たんぱく質食をとることで 2 型糖尿病患者の肝臓脂肪が減少し、 「非アルコール性脂肪肝」 が改善されたとする研究結果が発表されました。
■研究発表論文
Isocaloric Diets High in Animal or Plant Protein Reduce Liver fat and Inflammation in Individuals with Type 2 Diabetes.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27765690
2 型糖尿病患者が発症しやすい 「非アルコール性脂肪肝」 とは？
脂肪肝は一般的にアルコールの摂りすぎが原因と思われがちですが、実際はその限りではありません。
近年、アルコールの摂取過多を原因とする脂肪肝を 「アルコール性脂肪肝」 、アルコール以外の原因を持つ脂肪肝を 「非アルコール性脂肪肝 （non-alcoholic fatty liver ： NAFL）」 と呼び、両者を区別するようになりました。
インスリン抵抗性を持つ糖尿病患者は、ブドウ糖を利用できず体に脂肪を蓄積しやすい傾向があります。肝臓にも脂肪が蓄積されやすくなるため、糖尿病患者は脂肪肝になりやすくなるのです。
そのため、糖尿病は肥満とともに、 「非アルコール性脂肪肝」 の原因の一つに挙げられています。
6 週間の高たんぱく質食により、肝臓の脂肪が30％以上も減少
前述したレーブリュッケ人間栄養研究所とハンブルク大学、糖尿病研究センターによるドイツの研究チームは、高たんぱく質食品による 「非アルコール性脂肪肝」 の改善を目指し、研究を行いました。
実験対象となったのは、 2 型糖尿病かつ非アルコール性脂肪肝の37人の患者です。「動物性たんぱく質食主体（主に赤身以外の肉と低脂肪乳製品）」と「植物性たんぱく質食主体（主にエンドウ豆）」の2パターンにわけ、6 週間の高たんぱく質食指導を行い、その結果を比較をしています。
その結果、動物性、植物性を問わず、すべての被験者で肝臓の脂肪が36～48％減少し、脂肪肝の改善が確認された。さらに、腎機能の低下は見られず、インスリン抵抗性は改善されており、肝臓の炎症も緩和されていたという。
（出典：Aging Style）
実験前には高たんぱく質食品の摂取が、インスリン抵抗性の増加や、腎機能の低下といったネガティブな側面があるのではないかと懸念されていましたが、実験によりそういった懸念は否定されました。
研究チームは「高たんぱく質食は糖尿病患者の脂肪肝改善には有効」と判断しているということです。
※既に、たんぱく質制限を主治医から指示されている場合は、この限りではありません。
良質なたんぱく質を含む食品を選び、健康的な食生活を
糖尿病患者の脂肪肝改善に役立つと言われるたんぱく質は、さまざまな食品に含まれていますが特に以下のような食品に良質なたんぱく質が多く含まれていると言われています。
・肉類（牛、豚、鶏、ハムなど）
・魚介類（魚、小魚、貝、ねり製品など）
・卵類（鶏卵、うずら卵など）
・大豆および大豆製品（大豆、納豆、豆腐など）
・牛乳および乳製品（牛乳、ヨーグルト、チーズなど）（出典：栄養成分ナビ | 栄養成分百科）
たんぱく質は 「動物性たんぱく質」 、 「植物性たんぱく質」 に分類され、それらのうち高たんぱくであっても、脂質や糖分なども多く含む食品も存在しています。高たんぱく質食品を取る際には、それ以外の栄養素にも注意して選びましょう。
たんぱく質や特定の食品や成分にこだわり過ぎず、全体的に栄養バランスの良い食事を日ごろからいただくようにしましょう。
■ 出典
愛媛大学医学部付属病院 肝疾患診療相談センター
市立奈良病院 非アルコール性脂肪肝炎とは （NASH）
日本内科学会雑誌 第103巻 第12号 脂肪肝と糖尿病の最前線
アンチエイジング医師団／J-CAST Aging Style
沢井製薬 サワイ健康推進課
田辺三菱製薬 よくわかる！肝機能ナビ
株式会社メディウィル いしゃまち
江崎グリコ株式会社 栄養成分ナビ | 栄養成分百科