アメリカ糖尿病学会、2017年の標準治療指針を改訂。メンタル疾患の重視やDM手術も

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アメリカ糖尿病学会(ADA)では昨年12月、2017年の標準治療指針を発表しました。本改訂は2016年にADAが発表した新ガイドラインの反映に加え、メンタルケア、医療へのアクセス、治療の個別化の推進、低血糖の監視等に重点を置いた内容となりました。また、メタボリック手術という日本ではまだなじみの少ない治療についても記載を加えたとのことです。

なお、合併症のリストにおける対象疾患として新たに不安障害、抑うつ症状、過食などの食行動異常ならびに重度の精神病を追加。今回 の改訂で目立つ、糖尿病における 「メンタル面」 と 「食行動」 の関連性の深さが印象づけられました。

 

ホルモン分泌や自律神経のバランスに影響するうつ症状、血糖コントロールの悪化を招く事実

奥村泰之氏 (国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部 外来研究員)の研究によりますと、糖尿病患者は、うつ病を併発しやすいことが明らかになっています。因果関係として考えられるのは、心身に過度なストレスをかかえることで血糖値を上げるホルモンが分泌され、インスリン抵抗性があがります。また、ストレスを解消するために過食に陥るケースや、空腹でもないのにイライラしたときなど、だらだらと手近なおやつを食べ続けてしまうなどの食行動に走ってしまうことがあります。これらの悪循環で血糖コントロールは悪化しますし、さらに自己嫌悪になって摂食障害を引き起こしてしまうリスクも存在しています。

インスリン抵抗性が上がり、血糖コントロールの悪化が常態化してしまうことは糖尿病患者にとっては大きな問題となりますので、ADAが標準治療方針にメンタル的疾患への治療・ケアを追加したことは大きな意味があると言えます。

 

メタボリック手術による2型糖尿病への影響、日本における術後成果は?

もう一点注目なのが、2型糖尿病に対するメタボリック手術の適応を「BMI30(アジア系米国人は27.5)でコントロール不良の2型糖尿病を有する患者」に拡大するという記載です。『m3.com』 の記事によると、

日本ではBMI35以上の糖尿病患者は糖尿病患者全体の1-2%程度と推計されているが、BMI27以上の場合、全体の10%以上が適応となる可能性がある。(出典:m3.comより)

とも示されています。なお、日本での手術成績は術後5年目の寛解率も7割以上 (同上) という数字が出ています。当然ながらDM手術適用は医療機関による診察と判断になるため、BMI数値だけで手術が必要と思うことは危険です。

同指針改訂における全文は、Diabetes Care2016年12月15日オンライン版に掲載されています。

 

■ 出典、参考

株式会社創新社 糖尿病ネットワーク

エムスリー株式会社 m3.com

 

 

 

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