3月21日、奇しくも同日に SGLT2 阻害薬に関するニュースが二つ報じられました。 SGLT2 阻害薬とは日本で2014年から使われ始めた比較的新しい薬で、尿中に糖を排泄させることによって血糖値を下げる2型糖尿病治療薬です。
英アストラゼネカ社が大規模試験を実施。心不全の入院・死亡率が約半分に減少
まず、一つ目のニュースは英国のアストラゼネカ社による、 SGLT2 阻害薬での治療が他の糖尿病治療薬と比較して 「心不全による入院率および死亡率を有意に減少させる」 というものです。同薬の治療を受けた2型糖尿病患者における心不全での入院・総死亡リスクを初めて評価した、大規模リアルワールドエビデンス ( RWE ) 試験 「 CVD-REAL 試験」 の結果が、第66回米国心臓病学会年次学術集会にて発表されました。
CVD-REAL 試験の対象者は世界6カ国30万例超、そのうちの87%には心血管系疾患の既往歴がなかった2型糖尿病患者です。結果として、心不全での入院率が39% ( p <0.001) 、総死亡率が51% ?( ?p ?<0.001) 減少、入院と総死亡の複合評価項目の減少率は46% ( p <0.001) にもなったとしています。また、今後もデータ収集を継続し、複数の解析を実施予定であることが明かされました。
難病・脂肪萎縮性糖尿病に効果を発揮 東北大が世界初の報告
二つ目のニュースは東北大学が公表した、 「難病指定の脂肪萎縮性糖尿病が SGLT2 阻害薬によって著明に改善する」という研究結果の発表です。脂肪萎縮症とは先天性または AIDS の治療薬などによって後天性に発症する、通常の糖尿病治療では好転が難しいとされている強いインスリン抵抗性が特長の糖尿病です。
※インスリン抵抗性:肥満や内臓脂肪蓄積などによって引き起こされた、インスリンが効果を発揮しにくくなる状態のこと。
今回の研究においては、同大学病院糖尿病代謝科の今井淳太講師、川名洋平医師、片桐秀樹教授らのグループが、長期間コントロール不良な糖尿病であった先天性全身性脂肪萎縮症に SGLT2 阻害薬を投与、その結果として脂肪肝の減少とインスリン抵抗性の改善が見られたとしています。以前より同薬は脂肪燃焼の内臓脂肪減少効果が知られており、本研究においてもそれがインスリン抵抗性の改善に繋がったと考えられています。
東北大学によれば、 SGLT2 阻害薬は保険適用なため比較的安価に用いることができ、内服薬であることから注射の痛みもありません。それらの要素も含めて、今後の活用事例に注目していきます。
■ 参考
アストラゼネカ株式会社 公式リリース
東北大学 公式リリース
日本イーライリリー株式会社 知りたい!糖尿病
難病情報センター 脂肪萎縮症(指定難病265)