温熱微弱電流併用療法の 2 型糖尿病治療効果を熊本大学が発表。新たな治療法として期待

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熊本大学は、ベルト型新規医療機器による温熱微弱電流併用療法に 2 型糖尿病の治療効果があることを発見したとして、臨床実験の結果を得たことを “Scientific Reports” オンライン版に発表しました。熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野の近藤 龍也講師、荒木 栄一教授らが、同大学薬学部遺伝子機能応用学分野の甲斐 広文教授と共に、この治療器を開発し研究を進めてきました。

 

特殊なゴム素材のベルトで微弱電流と温熱を付与することで、内臓脂肪が減少し血糖値が改善

このベルト型新規医療機器には、熱と電流を同時に伝達できる特殊な合成ゴム素材が使用されています。治療器を巻いて微弱電流 ( MES: Mild Electrical Stimulation ) と温熱 ( HS: Heat Shock ) を同時に付加すると、ゴムから遠赤外線が放出されて細胞を直接温めることができます。その結果、熱ショック応答経路 ( HSR: heat shock response ) が活性化し、内臓脂肪の減少と血糖値の改善に効果が見られたということです。

画像出典:熊本大学プレスリリース
画像出典:熊本大学プレスリリース

同大学は 2014 年に、肥満の 2 型糖尿病の男性 40 名を対象に、この治療器を使用して臨床実験 ( 1 回 60 分、週 4 回施行) を行い、空腹時血糖値の低下およびインスリン抵抗性の改善、内臓脂肪減少や HbA1c 値 を 0.43% 低下させる効果があることを発表していました。このときの実験では、対象者の 52.5% が糖尿病治療目標として掲げられる HbA1c 7.0% 未満を達成しています ( eBioMedicine. 2014 ) 。

※ 2 型糖尿病には、この HSR の低下が認められます。 HSR の主要タンパク質である HSP72 の機能回復を行うと糖代謝異常が改善することがわかっています。

 

熱ショック応答回路の活性化が、 2 型糖尿病治療の新たな選択肢に。運動療法が困難な患者にも朗報

今回の実験では、男女を問わず 肥満の 2 型糖尿病患者60名を週 2 回、 4 回、 7 回の群に振り分け、12 週間にわたって治療を行いました。その結果により、どのくらいの頻度で治療を行えば最も効果が高くなるのかを測定しています。

その結果、治療の頻度が高いほど内臓脂肪が減少し、 HbA1c 値が低下することが確認されました。また慢性炎症、脂肪肝マーカー (脂肪肝の診断指標値) 、腎機能および脂質プロファイル (脂質に関連する指標値) も改善しています。さらに、この治療は糖尿病治療薬の DPP-4 阻害薬のと併用した際に、より強い血糖改善効果が認められました。

 

以上の点から、微弱電流と温熱を利用して熱ショック応答経路を活性化することが、新たな糖尿病治療の方法となることがわかってきました。ベルト型の治療器を身につけるだけなので、患者の肉体的な負担も少ない状態で治療を行うことができます。障がいなどにより運動ができない人や、高齢患者にとっても、大きな希望と言えるでしょう。現在は、最適な使用回数を検討中ということですが、 1 日も早い実用化が期待されるところです。

 

■ 発表者
近藤龍也、後藤理英子、小野薫、北野さやか、佐藤美希、井形元維、河島淳司、本島寛之、松村剛、荒木栄一(熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野)
Mary Ann Suico、甲斐広文(熊本大学生命科学研究部遺伝子機能応用学分野)

 

■ 出典
熊本大学 プレスリリース
株式会社QLife 医療NEWS

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