2型糖尿病に合併する認知症には中強度運動が有効。筑波大学が発表した新たな研究成果

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糖尿病の合併症の一つとして、 「認知症」 が挙げられます。発症リスクは糖尿病でない高齢者と比較すると約2倍ともされ、り患期間が長いほど高まる傾向にあるとされています。その原因は、認知機能の維持に必要不可欠な、脳の海馬における乳酸利用の低下ではないかとされてきました。 (画像出典:筑波大学 公式リリース

 

4週間の中強度運動が脳へ影響 認知機能低下を改善することが明らかに

そんななか、12月9日に筑波大学より、糖尿病と認知症の関係性について新たな研究成果が発表されました。これは同大学体育系の征矢英昭教授と島孟留院生、米 Rockefeller 大学の Bruce S. McEwen 教授、スペイン Cajal 研究所の Ignacio Torres-Aleman 所長ら共同研究グループの手によるものです。

 

同研究グループは、ヒトのⅡ型糖尿病モデルである OLETF ラットを用いた研究により、 OLETF ラットの 海馬では、健康な ( LETO ) ラットに比べてグリコゲン貯蔵量が増加し、神経細胞への乳酸取り込みを担う MCT2 の発 現量が減少していることを明らかにしました。さらに、4週間の中強度運動が、 OLETF ラットの海馬のグリコゲン貯蔵量を増大させ、減少していた MCT2 発現量を回復するとともに、認知機能を改善することを見出しました。これらの結果から、 MCT2 を介したグリコゲン由来の乳酸輸送の低下が Ⅱ 型糖尿病に合併する認知機能低下の 一因であり、4週間の中強度運動はこの治療に有用であることが示唆されました。 (引用出典:筑波大学 公式リリース

 

つまり、筑波大学の研究グループは2型糖尿病ラットを用いて実験を行うことで、この病気に合併する認知機能低下は4週間の中強度運動で改善できると明かしたのです。さらに、海馬において低下した乳酸輸送能も回復するとしています。

 

運動療法の展開に期待。2型糖尿病の治療に前進か

同研究グループは以前より、中強度運動が海馬のグリコゲン (ブドウ糖を体内に貯蔵しやすいように変換したもの) の代謝を高め、認知機能の向上に効果的であると考えていました。そのため、今回それに由来する乳酸利用能の異常が、2型糖尿病に合併する認知機能低下の原因の一つになることを検証、改善方法として運動が効果的であることを実験するに至ったとしています。
具体的には、2型糖尿病のラットと健康なラットの海馬を比較して、2型糖尿病のラットにグリコゲン貯蔵量増加と乳酸を神経細胞へ取り込む MCT2 の発現量減少が見られることを突き止めました。そのうえで、週5日30分間の中強度運動を4週間実施させ、認知機能の改善に繋がることを明らかにしています。
この研究結果で糖尿病と認知症の関係は解明に近づいたといえます。今後は2型糖尿病治療のため、脳へ向けた運動療法の展開が予想されています。

 

■参考
筑波大学 公式リリース

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