【第8回】松本慎一先生によるバイオ人工膵島移植の進捗状況

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日本でのバイオ人工膵島移植実現に向けて、その進捗状況を、この分野の第一人者である松本慎一先生(日本初の膵島移植医で医療用ブタ開発のために自ら法人まで立ち上げられました)より毎月報告していただいています。
第8回は、世界で一番規制が厳しいと言われるFDA(米国食品医薬品局)が異種膵島移植の臨床治験を承認し、米国で治験が始まったことについてです。
米国での治験開始は、日本を含む世界のバイオ人工膵島移植を大きく前進させる画期的な出来事と言えるでしょう。

また、バイオ人工膵島移植の研究を続ける国立健康危機管理機構の霜田雅之先生からも、毎月報告していただいております。
▶ <第7回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)

バイオ人工膵島移植の進捗(第8回)

米国のJuvenile Diabetes Cure Alliance(JDCA)というグループから、New T1D Practical Cure Trial Uses Pig Isletsというニュースが発表されました。この発表では、2025年6月から米国のイリノイ大学病院でカプセル化ブタ膵島を用いた1型糖尿病患者の臨床治験(人を対象に有効性や安全性を調べること)が始まったことを伝えています。

Juvenile Diabetes Cure Allianceというグループは、2011年に創設されたグループで、目的を「1型糖尿病のPractical Cure(実用的治療)」を目指すことに100%特化しています。15年以内の実現を目指すとしていますので、2026年にPractical Cureを達成させることを目指しています。彼らの定義するPractical Cureは以下の通りです。

1 HbA1c<7% 又は ブドウ糖値が70-180mg/dlの時間帯が70%超
2 副作用は最小で一過性(長期の副作用がない)
3 デバイス(機器)や技術の場合は、付けていることを忘れるくらい小さい
4 手術が必要な場合は5日以内
5 最小限の血糖モニタリング
6 食事制限なし
7 低血糖を起こさない

JDCAは、このプロジェクトに最新の進歩があれば、アップデート(更新)するとしています。

米国でカプセル化膵島移植の臨床治験が開始されたということは、アメリカの規制当局であるFood and Drug Administration (FDA:米国食品医薬品局)が、米国での異種膵島移植の臨床治験を承認したことになります。FDAは世界で一番規制が厳しいとされており、FDAのこの承認は、世界の異種膵島移植を前進させる原動力になります。

つまり、日本のバイオ人工膵島移植においても、朗報になると考えています。

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◇松本慎一先生連載記事
▶ 【第1回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第2回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第3回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第4回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第5回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第6回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第7回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)
▶ 【第8回】バイオ人工膵島移植の進捗状況(松本慎一先生)

◆霜田雅之先生連載記事
▶ <第1回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)
▶ <第2回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)
▶ <第3回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)
▶ <第4回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)
▶ <第5回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)
▶ <第6回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)
▶ <第7回>バイオ人工膵島移植の進捗状況(霜田雅之先生)

プロフィール
名前:松本慎一
神戸大学大学院医学研究科 客員教授
日本IDDMネットワーク理事
日本初の膵島移植医

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