今、改めて知りたいバンティング博士の功績
昨日11月14日は、インスリンを発見したフレデリック・バンティング博士の誕生日を記念し、世界糖尿病デーに定められています。☆?関連記事
昨日の 『Google Doodle』 が、このバンティング博士だったことに気がついた方も多いのではないでしょうか。
『Google Doodle』 は記念日や祝日にちなんだデザインに変更される Google のロゴ。2016年11月14日は、単なる誕生日ではなく、なんと博士生誕125周年にあたる記念日だったのです。さらに驚嘆することに、博士がインスリンを発見したのはおよそ1921年であり、今から96年前のこと。
この発見が糖尿病治療法開発における大きく画期的一歩だったことは歴史が証明していると言えます。残念なことに、博士はインスリン発見から約20年後、飛行機事故により49歳の若さでこの世を去りました。
(画像出典:wikipedia)
博士29歳、過酷な研究をたった一人の助手と開始
インスリンが発見されるまでの糖尿病治療法は、炭水化物代謝のできない患者に極めて低いカロリーに抑えた食事を与える 「減食療法」 しか存在しませんでした。カナダに生まれ、トロント大学を卒業後は軍医としての経験も持つフレデリック・バンティング博士は、当時大学で教鞭を執っていました。就寝前に論文を読むのは博士の当時の日課で、そのとき 「膵臓の外分泌管を縛り十二指腸から切り離しても糖尿病にはならないので、消化酵素とは異なるものが糖尿病を阻止している」 とするモーゼス・バロンの論文にくぎ付けになりました。
以来、膵臓の内分泌の単離に関するアイディアを書止め、有用な分泌物を人体から安全に採取する方法を試行錯誤することに。しかし、それらはどれも成功とは程遠いものだったのです。
当時21歳の若きチャールズ・ベストを助手に、研究が開始されました。
犬の膵臓管を縛る手術を試してみたところ、膵臓が部分的に萎縮した。純粋な分泌物を高濃度で含むことが期待される膵臓は数週間後に切除された。抽出物を糖尿病の犬に投与すると血糖値が下がった。
数ヵ月の実験を経て、彼の方法が成功し、抽出物によって糖尿病の犬を生かし続けておけることが明らかとなった。(出典:wikipedia)
さらなる改良を重ね、1921~1922年にかけて抽出物を得る方法が大きく改良され、 「島細胞」 を意味する英語にちなみ、 「アイレチン」 と命名。その後、バンティング博士の指導者であるマクラウドによりラテン語の 「インシュリン」 と命名されたのです。
世紀の発見を前に、利権に沸く人々。高邁な意志を貫いたバンティング博士
この画期的な医学界最大の進歩は、数ヶ月で大量生産が可能となるほどに前進を遂げます。これにより、多くの糖尿病患者の命が救われました。しかし、その輝かしい功績の裏には、インスリン発見に尽くしたバンティングと助手ベストの労が完全に報われたわけではないエピソードも存在しています。
バンティングは、好待遇でのアメリカからの誘いを断り、地元カナダに留まり、たった 1 ドルで巨額の利益さえ見込める発見をトロント大学へ譲り渡します。
のちのち研究チームに加わったメンバーにより、この発見や治療法の利権を得ようとする考えの逆をいき、「今、目の前にいる糖尿病患者の救済」 を重視した高潔な使命感が彼にはあったのです。のちにノーベル生理学・医学賞を受賞し、ジョージ5世からナイトの爵位を授与されたバンティングには、無私なる研究者としてカナダ国内で大いに尊敬を集めました。
医学は日進月歩、世界中で今も新たな発見が、情熱と高邁な意志を持つ研究者たちのたゆまぬ努力によってもたらされています。輝かしい成果の反対には、多数の苦難の連続があり、それでも研究を諦めなかった研究者に改めて感謝と敬意を思いたいものです。
■ 出典、参考
ウィキペディア フレデリック・バンティング
カナダ人物列伝 インシュリンの発見
Google?? Google Doodle