9月14日、日刊工業新聞は、東京医科歯科大学生体材料工学研究所の三林浩二教授らが、吐く息の中に含まれる微量の成分を測定することで、糖尿病の進行度の評価につながる手法を開発したことを報じました。呼気の中に含まれるアセトン濃度を測定することで、採血の必要なしに、体の脂肪代謝の状態や糖尿病の進行度の健康チェックが、将来可能になるかもしれません。
学校での検診時に測定を実施し、早期発見・早期治療を目指す
アセトンは、体内で脂肪がエネルギー源として使われたときにできる物質です。インスリン分泌の低下により、高血糖状態が続く場合に、この物質が発生しやすくなります。また、空腹や運動によっても、アセトン濃度が増加すると報告されています。
今回報じられた研究により三林教授らが目指しているのは、1型糖尿病の早期発見です。
1型糖尿病は早期のインスリン療法導入が必須であるにも関わらず、発症からしばらく経って、やつれたり、昏睡状態に陥って初めて周囲が気づくという場合も多くあります。しかし、採血などの必要なく簡単に呼気での調査ができれば、学校での歯科検診などの際に検査を行うことで、潜在的な患者を発見し、早期治療につなげることができます。
今回の手法では、研究チームは「2級アルコール脱水素酵素(S-ADH)」がアセトンと反応する際に、蛍光物質「還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)」が減少して蛍光が弱まることに着目。紫外線発光ダイオード(UV-LED)と光電子増倍管からなる検出器に、S-ADHを固定化した膜を取り付けました。この膜上でのNADHの蛍光強度の減少により、アセトン濃度を見積もる仕組みということです。
1型糖尿病の早期発見へとつながるこの研究、早期の実用化が望まれます。
■ 参考
株式会社日刊工業新聞社 日刊工業新聞
株式会社日本経済新聞社 日本経済新聞
株式会社 創新社 糖尿病ネットワーク