「ゴールは見えている」。射程圏内にある1型糖尿病根治に向かって~「バイオ人工膵島移植プロジェクト」の現在~

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去る3月13日、日本IDDMネットワークの井上 龍夫理事長は「バイオ人工膵島移植プロジェクト」における研究チームの一翼を担う国立国際医療研究センターの春日 雅人理事長を訪ね、プロジェクトにおける現状について意見交換を致しました。研究助成の実績報告を皮切りに、CPC(細胞加工センター)建設への研究助成や将来展望など充実した内容となりました。

 

国立国際医療センター 春日理事長に聞く、バイオ人工膵島移植研究における進捗

井上)こんにちは。本日はご多忙のなか、お時間をいただきありがとうございます。昨年の今頃「バイオ人工膵島移植プロジェクト」が本格的にスタートを切り、一年ほどの間に国立国際医療研究センターならびに福岡大学によるバイオ人工膵島の基礎研究開発、京都府立大学の井上先生によるブタの感染症検査体制の構築、明治大学の長嶋先生による医療用ブタの飼育管理施設への研究助成を行ってきました。現在、最終段階となるCPCの建設に向けて資金調達を行っている状況です。助成金は今月末にまず4500万円を、次いで2500万円を助成し、プロジェクト全体で1億5千万円の助成を行う計画です。

春日理事長)日本IDDMネットワークさんからの多大なご支援を非常にありがたく思っております。皆さまのそうしたご支援には、霜田先生をはじめとする研究者たちも心強く感じると同時に、効率よく活用することで一刻も早く皆さまに還元したいとがんばっているところです。私たちの研究主旨を理解していただいたうえで高額な寄付をいただくことになり、感謝しています。

井上)こうした高額な研究助成を実現するに至ったのは、佐賀県による「ふるさと納税」によるNPO支援という仕組みを採用したことによります。助成金額も2桁ほど大きくなりましたし、霜田先生をはじめ研究者の皆さんには、そうしたことをふまえたうえで世のなかへ示すことへのご尽力もいただければと思っています。研究の進捗などお聞かせいただけますか?

春日理事長)おっしゃるとおりですね。昨年助成いただいた費用で、霜田先生はブタの膵島の基礎的研究を行ったとの報告を受けています。やってみてわかったこととして、ヒトの膵島と違ってブタの膵島はとても壊れやすい、弱いということがわかったそうです。「バイオ人工膵島プロジェクト」では膵島をコラゲナーゼという酵素で分解、バラバラにしてコンディションを調整するのですが、これが壊れやすい。培養においてもヒトの膵島と違ってくずれやすいそうです。そうしたことが実験によって判明していますが、糖尿病マウスに移植すると血糖値は下がることも確認でき、効果があることが示されています。

国立国際医療研究センター 春日 雅人理事長

井上)なるほど、膵島としての機能(血糖値を感知してインスリンを放出)はしているということですね。臨床に進むにはまだまだ実験的プロセスを経る必要があるでしょうし、研究費をご活用いただいて着実な進展を期待しています。CPCの方はいかがでしょうか?

春日理事長)医療用ブタの膵臓を無菌状態にしてCPCに移します。そこで細菌が少ない状態でコラゲナーゼ処理を施し、膵島を取って培養する。1年以内に建設予定のCPCとは「これであれば人体へ移植できる」という環境を整備して細胞を処理する施設です。

 

実用医療への道のりは?「非当事者」を「当事者」としたことの意義

井上)移植部位や免疫の問題についてはいかがでしょう。

春日理事長)概ねうまくいっています。とはいえ改良の余地はあります。特殊なカプセルに封入するので免疫抑制剤は不要なのですが、アルゼンチンで行われた例では腹腔に移植する方法が採られましたが血管中より反応が遅い。しかし経過観察のしやすさや侵襲性の少なさから見て腹腔がいいだろう、など、改良に向けては大学や企業などいくつものプロジェクトが動いています。

井上)民間企業や他の研究者なども視野に、私たちはオールジャパンという体制で短期間で実用医療に近づけられるべく支援していきたいと考えています。ところで、現在の膵島移植ではインスリンから解放されても免疫抑制剤の問題があるので患者・家族は二の足を踏んでしまうところがあります。免疫作用を制御できれば、そういう意味でもバイオ人工膵島は大きな可能性があると考えているのです。

日本IDDMネットワーク 井上 龍夫理事長

 

春日理事長)ええ。免疫制御は非常に重要な課題です。

井上)私も「患者の家族」であり、息子が小学2年生で発症し現在31歳で26年の罹患歴です。つらい思いをしながらも、家族として「治す」病気にするために2005年からこうした研究支援活動を開始した経緯があります。患者・家族のこうした思いに応え、根治を実現すべく寄付を募ってきましたが思うように進みませんでした。春日理事長は患者・家族団体による治療研究への助成活動の意義についてどのような見解をお持ちでしょうか。また、今後の拡がりについての期待などはいかが思われますか?

春日理事長)まず、「ふるさと納税」を活用した佐賀県の取り組みについて改めて理解を深めたく思いますが、佐賀県が支援指定をしているNPOは複数あると思います。そのなかで何故ここまで日本IDDMネットワークが選ばれることができたのでしょうか?

井上)いかに私たちがアピールするか?ということが不可欠でした。もう一つ特長として、私たちを指定してくださった方々の8割ほどは、1型糖尿病やその関係者とも無関係だったことがわかりました。そのことは非常に大きな成果であり、この取り組みによって1型糖尿病を非当事者に知らしめることができたのです。また、「ふるさと納税」には多くの魅力的な返礼品がありますが、研究支援をしたいので返礼品はいらない、という声までありました。この仕組みを通じてその副次的効果として一般の人がこの病気を知る、という社会からの1型糖尿病の認知獲得につながっているという手ごたえを感じています。

春日理事長)1型糖尿病を知って指定してくださったことの意義は大きいですね。また、「バイオ人工膵島移植プロジェクト」では、我々が普段存じ上げない医療用ブタの専門家の方やブタ感染症の専門家の方などと研究助成を介して知り合うことができました。お互いに研究を発展させることができ、素晴らしいことだと感じています。患者団体で独自に研究室を訪ねることなどは、研究者の人柄や普段からどれだけ研究室がアクティブなのかがわかるので良いことです。接点は多くなればなるほど良いでしょう。

 

当たり前の日常生活が送れる日を目指して。夢ではない1型糖尿病、根治の日

井上)はい。私たちでもそうした先端研究をわかりやすく報告することを大切にしています。最後に寄付してくださった方々へメッセージをいただけますか。

春日理事長)1型糖尿病を理解したうえで病気とは直接関係のない方々が社会への貢献という観点からご支援くださっていることにありがたく思っております。この病気には無自覚性の低血糖がしばしば起こってしまい、そうした重症の患者が一定数いらっしゃいます。医療が進んだ今日のような段階であっても、当たり前とされる日常生活が普段にも送れない方が一部いらっしゃる現実を知っていただき、寄付をしてくださるとありがたいです。そして私たちは、その資金を有効に活用し、一日も早く患者さんが普通の日常生活を送ることができるようにしてさしあげたいと考えております。

井上)インスリンの副作用としての低血糖リスクがなくなるだけでも大変な福音です。息子も時々通勤中に低血糖で倒れたという知らせが病院からきます。それだけでもなくなってくれるといいと思うのです。段階を経ながら、根治へ向けた着実な一歩を、寄付者の方々へ私たちの感謝と共に研究成果を報告していきます。

「ゴールは見えている」。硬い握手を交わす春日理事長と井上理事長

 

春日理事長)1型糖尿病は医者としての感覚で言えば射程圏内に入っている病気だと思うのです。根治が夢みたいなことではなく、そこまで見えてきています。そういう意味では研究者としてももっともやりがいを感じることができます。と言うのも、ゴールが見えず途方もない道のりではなく、一生懸命、ちょうど目標を持ってしっかり狙える良いターゲットということです。

井上)ゴールが見えていること、それはうれしいことです。暗中模索では難しい。そのゴール実現を患者と家族が待っています。

 

※バイオ人工膵島移植の国内初の実施に不可欠な細胞加工センター(CPC)建設資金を集めるプロジェクトは、下記サイトにて本日3月31日(金)までの実施となっております。
ふるさと納税を活用した1型糖尿病根治に向けた研究支援にご協力をお願い致します。

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