皆さん、こんにちは。日本IDDMネットワーク専務理事の大村詠一です。
私もついに1型糖尿病の罹患歴が満25年となりました。あっという間でしたが、いろんな経験を積んだ四半世紀だったと思います。
その中で、いろんなご質問を受けてきました。中には似通った質問をいただくことがあり、そんな質問に答える記事を書くことで患者・家族の皆さんの参考になればと思います。
「細い針は本当に痛くないのか?」
私はインスリン注射を打っていると、しばしば「痛くないの?」と尋ねられます。そこで、基本的には痛点に当たらなければ痛くないこと、逆に痛点に当たった場合はとても痛いので刺し直すこと伝えています。すると、だいたい「最近の針は細くなって痛くないんでしょ?」と言われることが多いです。
では、本当に針が細くなったから痛くないのでしょうか?
私は実はそうは思っていません。
患者がインスリン注射を打つ際は2つの痛みがあると思います。1つは「刺すときの痛み」であり、もう1つは「インスリンを注入するときの痛み」です。
「刺すときの痛み」
まず、刺すときの痛みについて考えたいと思います。
刺すときに痛みを伴うのは、痛点に当たる場合と皮下脂肪が少ない箇所に注射をして筋肉注射になった場合だと思います。痛点に当たる確率は、直径がほんの0.02mm細くなっただけで劇的に変わるものではないと思うので細さはあまり影響がないように思います。
※皮膚には痛点が1平方cm当たり100~200個分布している(痛点の直径は約100μm=0.001mm)
しかし、短くなることで針が筋肉まで達さずに筋肉注射となるのを防げることは有益だと考えますので、「刺すときの痛み」を抑えるのに針の長さは考慮すべきではないでしょうか。
私の場合はエアロビック競技の現役を引退して皮下脂肪が増えましたので、以前より長い針でも筋肉注射にならず、刺したときの安定性が増しているようです(苦笑)。
「インスリンを注入するときの痛み」
次に、インスリンを注入するときの痛みについて考えてみたいと思います。
患者は、注射針を体に刺して終わりではありません。その後、インスリンを注入する必要があります。
個人的な体感ではありますが、1〜3単位で済むような補食や補正の際の超速効型インスリンや速効型インスリン、中間型インスリンを打つ際は、34Gのような細い針でも31G、32Gのような少し細い針でもあまり違いがありません。
それに対し、持効型インスリンや糖質量の多い食事の際の超速効型インスリンなど単位量が10数単位におよぶときには、細い針だと噴出口を押さえられたホースのように注入圧が増し、痛みを感じることがあります。上記の視点で考えるとむしろ「インスリンを注入するときの痛み」に関しては、針の細さがかえって痛みを生み出していることもあるのではないかと思います。
「まとめ」
これらのことから、「細い針は本当に痛くないのか?」は「場合による」というのが答えであり、インスリン注射の痛みを考えるときには、注射針の細さだけに着目してはいけないのではないかと考えます。
最近は、いろんな太さや長さ、形状の注射針が発売されています。けれども、主治医に処方された注射針しか使ったことがない方も多いようです。
皆さんも毎日何度も自分の体に刺す注射針について一度検討してみる時間をつくってみてはいかがでしょうか?