【インタビュー】IT企業就職後、医師を志して医学部へ…医師を目指す1型糖尿病患者 島田雄飛さん

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一度IT関連企業に就職後、医師を志して医学部に進学。現在医学部1年生である島田雄飛(しまだゆうひ)さんにお話をうかがいました。

 

発症時のこと

私が1型糖尿病を発症したのは小学6年生の夏休みのことでした。

はじめはのどが渇いてお茶をがぶ飲みしたり、日中や夜間を問わず頻繁にトイレに行くなどの症状がありました。日が過ぎるにつれて今度は倦怠感が増していき自転車もこげない程に、そして小学校の登校日になんとか教室にたどり着いたところすぐに倒れ救急搬送されてしまいました。

そして診察をしてくださった医師の口から「君は1型糖尿病という病気にかかってしまった。不治の病でこれからずっと自分で注射を打ち続けなければならない。」と告げられました。そのまま緊急入院となり、その夜は悲しさや絶望感でただただ泣くばかりでした

ただそんな時、頭に浮かんだのは父の顔でした。

私の家は父子家庭で父は私と妹を養うために毎日朝早くからその日の二人の朝ごはんと晩御飯を作ってから出社し、夜遅くまで仕事をしてくれていました。「そんな父にこれ以上負担を負わせたくない」と思い、「この夜が明けたらもう二度と泣かない、自分の力で闘っていこう」と覚悟を決め、私の闘病生活はスタートしました

 

 

1型糖尿病とのつきあい方

一晩で覚悟を決めることができていたので、闘病生活開始直後から治療に対してかなり前向きに取り組めてはいたと思います。

スポーツに関しては2歳のころからサッカーを続けていたのですが、当時の主治医に「サッカーは負担が大きいし、1型糖尿病患者がプロになった前例もないからやめておいた方がいい」と言われました。しかし当時の私はそこで諦めるどころか、「だったら自分が1型糖尿病患者初のプロサッカー選手になってやろう」と思い、治療とサッカーにさらに意欲的に取り組むことができました。(ちなみに元Jリーガー手の杉山新さんについて当時は知らず、のちに知りました。どうやら私の半年前ほどに発症されていたようです。)

また周囲との関係についてですが基本的には自身の病気についてオープンにしていました。

香川県は糖尿病の受療率が全国でもトップクラスに多い県で、周りに1型糖尿病であると伝えても「ああ、たまにいるよね」ぐらいの反応で1型糖尿病に対してかなり寛容でした。他にも小学校から高校まで自身以外に必ず一人以上は1型糖尿病患者の仲間がいたため心強く、それも周りに病気のことをオープンにできた理由でもあると思います。

もちろん病気に関して周囲の理解が得られず悩んだこともあったのですが、オープンにしていたおかげで部活中やその他の普段の生活で低血糖になってしまったときは周囲の人に力を貸してもらうこともできましたし、何より自分のやりたいことを自由にできたので本当にオープンにしていて良かったと今でも思います。大学生や社会人になってからも同じスタンスで生活してきたのですが、病気に関することで特に大きな問題などはありませんでした。

また妹が僕の半年後に1型糖尿病を発症してしまったのですが、その時の気持ちとして「先に発症した者として、また兄として手本となる治療を示さなければいけない」というものが心の中にありました。そういった気持ちもこれまで頑張って治療に取り組むことができた一つの要因なのかなと今では思います。

最後に僕の父についてです。正直父は本当にシャイな人なので僕や妹が発症したときにどういう気持ちだったのかは今まで聞いたことがないので分かりません。ですのでこれから述べることは僕が父の行動や言葉から感じ取ったものになります。

父は僕らが病気になったからと言って過保護になるわけではなく、一貫して僕たちを自立させようとしていました例えば父から「周囲の人には自分の病気のことは自分で説明しなさい」とか「自分で先生の話を聞きなさい」といった言葉を聞かされたのを覚えています。もっと言うと父が治療に関して口を出してきた記憶がありません。(ただし私が父の話をちゃんと聞いていなかったという説もありますが笑)

やはり父子家庭ということもあって父自身に何かあったときのために自分たちで生き抜く力を備えさせておきたかったのかなと思います。その教育方針のおかげもあり早々に自立して治療に取り組めたので父には本当に感謝しています。

 

医師を目指した理由

今年から医学部に入学して医師を目指しているのですが、きっかけは大学院生の時に参加した患者会でした。

子どものころは地元患者会のサマーキャンプには参加していたのですが、大人になってからは患者会には全く参加しておらずその時が久しぶりの参加でした。そこでいろんな患者さんと話してみて感じたことがありました。それは健常な方々に対して見えない「壁」のようなものを作っている患者さんが多いということです

具体的には職場や学校で周囲の人に自身が1型糖尿病であることを隠して生活をしていて、健常な方々と「分かり合う」ことを諦めてしまっている。そのためにストレスを抱えたり病状が悪化してしまったりというような状況の方が思ったより多くいらっしゃったのです。(勿論隠すこと自体が悪いというわけでは決してありません)

このことは私にとっては大きなカルチャーショックでした。そして次第に患者さんたちがもっと自由で、ありのままの自分で生活できるような、一言で言えば健常者の方々と「共生」していけるようなサポートがしたいと思うようになりました。その実現にあたって、普段の治療に加えて自身のこれまでの経験を活かしたアドバイスなども行っていけば少しでも何か変えられるのではないかと思い、医師を目指すことにしました

 

IT企業から医師を目指した(転職した)想い

元々就職前から岡山県の「1-Dream岡山」や神戸の「DMF KOBE」など1型糖尿病患者の患者会に参加させてもらうとともに講演活動も行っていました。就職後もしばらくは参加していたのですが、仕事が忙しく患者会への参加が難しくなってきたこと、患者会への参加を通して医療の分野へ進み1型糖尿病患者に対して何か貢献したいという気持ちが強くなってきたこともあり医師を目指すことにしました。また企業で培ったITスキルを医療の分野で活かせば患者の治療にもっと貢献できると思ったことも理由の1つです。

 

低血糖の対策

実は普段は補食をあまり持ち歩いていなくて、低血糖を起こしたときは近くのコンビニや自動販売機でその都度購入しています。(過去に何度もカバンのなかで腐らせたり、ぶちまけたりしたので…笑)

しかし入試やテスト、大事な仕事があるとき、周りにコンビニが無いような地域に行くとき、またスポーツをする際などは事前に十分な量の補食を準備しています。また普段からリブレを使って細かく(30分~1時間に1回程度)血糖値をチェックして、できるだけ早く対応できるように心がけてはいます。

リブレとは、間質液(細胞の間を満たす液体。組織液とも呼ばれる)の糖濃度を測定できる機器。厚さ5mm、直径35mmのセンサーを肌に装着し、リーダーで読み取ることで使用する。血糖値ではないが、それに近い数値を得ることができるだけでなく、継続した線として数値を見ることができる。

 

周りの友人たちと乗り越えてきた低血糖

重症までとはいかないですが、割と低血糖は起こしています(笑)。これまでサークル活動中や授業中、友達と話しているときなど色んな場面で低血糖が起きました。乗り越えていると言えるのかは分かりませんが、そういう時は周りを頼るようにしています。

私はサークル活動でフットサルをしているのですが、サークル中に低血糖になったら事情を話して交代をしてもらって休んでいます。授業中でしかも補食を持っていなかった時も周りに後で買って返すから食べ物とかジュースを分けてくれないかとお願いしたり、外で動けなくなった場合なんかはジュースを代わりに買ってきてもらったりしています。そうやって周りを頼りながらこれまで乗り越えてきました

 

心がけていること

心がけていることは2つあります。

1つ目は自身の病気のことについてちゃんと周囲の人に伝えることです。

普段から低血糖など体調が悪くならないように気を付けてはいますが、それでも低血糖になることはありますし、そのために自分だけの力では解決できないような場面に人生では多々遭遇します。そういった場面で他人に助けてもらえるようにするためにあらかじめ病気のことを周りに伝えるようにしています。また病気のことを知った人たちが、どこかで他の1型糖尿病患者を助けてくれるといいなという思いも込めて話しています

2つ目は周囲の人に尽くすことです。

1つ目の理由のところで「周りから助けてもらうために・・・」という話をしましたが、助けてもらうばかりの一方通行な人間関係は成り立たないと私は思っています。何かあった際に周りから「助けてあげたい」と思ってもらえるような魅力のある人間になるために、またいつも助けてくれる人たちへの感謝の気持ちとして周囲の方にできるだけ尽くそうと心がけています

 

みなさんへのメッセージ

LGBT、国籍、価値観などいま世界は様々な多様性を受け入れる風潮にあります。また先に挙げた元Jリーガーの杉山新さんのような多くの先駆者の努力のおかげで私たちの「できること」がどんどん増えています。

私たち1型糖尿病患者が健常者の方々と悩むことなく共生し、やりたいことを何でも自由にできるようになる日だってもうすぐそこまで来ているはずです。そのような日が一日でも早く訪れるよう私はいま大学で勉強を頑張っています。

仲間がいるとすごく励みになるので、皆さんの活躍もまた聞かせてください。私たちの明るい未来のために一緒に頑張っていきましょう。

最後まで読んで下さり本当にありがとうございました。

 

 

プロフィール

名前:島田雄飛(しまだゆうひ)
年齢:28歳 大学生1年生
出身:香川県出身&香川県在住
趣味:サッカー、フットサル、ジム通い、料理
その他:妹も1型糖尿病

【略歴】

11歳:1型糖尿病を発症
22歳:大学を卒業(化学を専攻)
24歳:大学院を修了(同じく化学を専攻)
24~26歳:IT関連企業にてシステムエンジニアとして勤務
28歳:医師となるために医学部に入学

(2021年6月XX 日掲載)

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