先日、NHKの生活情報番組で “ある特定の睡眠薬を飲むことで糖尿病が治療できる” といった内容の番組を放送しましたが、行き過ぎた表現への懸念が医療従事者らから指摘されました。結果としてNHKでは再放送を中止し、謝罪をする顛末へとなったのです。さらに、一部報道によると厚労省が2月24日までに口頭でNHKに注意申し入れをしたともされています。
信頼性高いメディアの責任。問われる個人の情報活用への姿勢
実はこの番組の熱心な視聴者でもある筆者の父は2型糖尿病患者であり、この騒動を知らずに興奮気味で筆者へ 「こんな治療法がある」 と連絡してきたので驚きました。その当時はまだ 「医療従事者から問題視されている」 という情報どまりではありましたが、高齢でかつテレビの情報がもっとも信頼できると考えている父にとって騒動は耳に入っていなかったのです。また、ただの民間放送ではなくNHKであったことも、父のゆるぎない信頼性に影響していました。糖尿病と睡眠障害の関連は昨今ますます研究も進み、因果関係において裏付けが多く示されていますので、実際に睡眠薬を処方されている患者も少なくないことと考えられます。
そうしたなか、「睡眠薬が糖尿病を治療できる」 と視聴者が誤解するような放送をしたことは影響力の観点で波及効果を考えると大きな問題と言わざるを得ません。もう一つ、番組の表現のせいで、番組に協力した医師や専門家の真の意図や考えが曲解されたことも見逃せません。
自分の健康を守るために 「なぜ?」 や疑問符は大切。自分自身がチェック機関となる
ただ、今回この件を取り上げるのはNHKを非難するという趣旨ではなく、やはり一人ひとりがメディアリテラシーを高め玉石混交の情報から正しいものを認識する必要性を考えさせられました。正しいものを完ぺきに見抜くことは困難であっても、「情報に踊らされない」 ことの方がより重要です。では、「情報に踊らされずに情報を活用する」 にはどういった心構えが必要なのでしょうか。
その一つに、情報を吟味する姿勢があります。論理がにわかに飛躍したような突飛とも言える (今回のような) 情報は鵜呑みにするのではなくいったん動向を見守ること。新しい理論は登場感の華々しさに注目しがちですが、時系列で検証結果が下りてくる傾向があります。しかも、他機関などによる客観的検証が参入してくることで偏りを回避することにもなります。また、日ごろからさまざまな情報媒体に接触していると、一つの事実や事象も媒体によって微妙に異なる表現で報道されていることに気がつきます。しかし、貫く一つの主張は同様であったりするので、そこから客観性で情報をひも解いていくことができます。これにはやはりある程度の訓練というか、時間を要するものではありますが、とりわけ健康を守るのは他ならぬ自分自身であるという基本に立ち返り、毎日少しずつでも情報へ接触する姿勢を意識してみることが大切です。
「PRESS IDDM」 においても例外ではなく、複数のチェックを通過した記事だけを公開していますが、一人ひとりのメディアリテラシーに基づき情報をお役立ていただければ幸いです。
■出典
NHK 「ガッテン!」 公式サイト