脳の酸化ストレスを抑えて2型糖尿病を予防・改善!東北大・筑波大の研究チームが発症メカニズムを解明

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世界中で増加し続ける2型糖尿病についてさまざまな研究が進展している現在ですが、新たにその発症メカニズムが解明されました。
発表したのは東北大学大学院医学系研究科の山本 雅之教授と筑波大学医学医療系の高橋 智教授らの研究グループです。教授らは今回の研究を通して 「脳の酸化ストレス」 が2型糖尿病を引き起こすことを発見・メカニズムの解明とともに、新たな治療へのアプローチに繋がる知見を得たとしています。

 

さまざまな疾患の発症原因となる 「酸化ストレス」 って?

今回、2型糖尿病発症の原因になるとされた 「酸化ストレス」 とは、酸化反応がもたらす生体にとって有害な作用のことをいいます。
日本抗酸化学会よれば、 “生体内で生成する活性酸素群の酸化損傷力と生体内の抗酸化システムの抗酸化ポテンシャルとの差” と定義されています。つまり、生体内で酸化反応が起こるときに発生して DNA やタンパク質などの細胞を損傷させる 「活性酸素」の力 と、それを解毒する抗酸化作用の力の差を 「酸化ストレス」 と呼んでいるのです。損傷力が抗酸化力を上回り、 処理しきれなかった余分な活性酸素は、細胞を損傷させて老化やがん、動脈硬化などの病気を引き起こすといわれています。
この酸化ストレスは、以前から2型糖尿病になると増加するといわれてきました。また、脳における代謝調節の破綻が2型糖尿病や肥満の原因になるとも知られてきましたが、これらふたつの関係性はわからないままでした。

 

ついに2型糖尿病との関連性が判明!脳の酸化ストレスがインスリンの作用を弱める

しかし今回、そのメカニズムが研究によって解明され、脳の酸化ストレスが2型糖尿病の発症に影響することが明らかとなったのです。
研究チームの発表によれば、まず、酸化ストレスを抑えるために重要なセレンを含有するセレノプロテイン群に着目。それらの合成に必須な遺伝子の発現を Cre リコンビナーゼにより特異的に低下させたマウスと比較することで、脳の代謝調節の司令塔とも呼ばれる視床下部領域における酸化ストレスの役割を調査しました。その結果、 視床下部に酸化ストレスが加わると、そこにある代謝調節に重要なプロオピオメラノコルチン陽性神経細胞が減少、インスリンや肥満抑制ホルモンであるレプチンの作用が減弱し、2型糖尿病や肥満の発症に繋がってしまうことが判明したのです。

本研究からは、酸化ストレスを抑える Nrf2 というタンパク質を視床下部領域で活性化させることで、酸化ストレスを減少させ2型糖尿病や肥満を予防・改善できる可能性も出てきています。今後は酸化ストレス抑制による、新たな治療法の開発が期待されます。

 

■ 参考
筑波大学 公式 HP
お知らせ・情報
酸化ストレスが糖尿病を引き起こすメカニズムを解明 ‐酸化ストレス防御機構による肥満および糖尿病の改善作用‐
日本抗酸化学会 酸化ストレス
Nrf2 Improves Leptin and Insulin Resistance Provoked by Hypothalamic Oxidative Stress: Cell Reports

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