精神疾患3.4倍、肥満1.53倍、脳卒中1.5倍、骨粗しょう症1.43倍……低所得者は高所得者に比べ、病気の発症リスクが高くなるとされています。その理由として、野菜やたんぱく質など、総合的な栄養バランスに配慮した食事よりも、安価でお腹にたまりやすい高脂肪、炭水化物過多の食生活に陥りやすい傾向が挙げられています。
さらに非正規雇用者と正社員を比較すると、糖尿病になる確率は1.5倍にも跳ね上がるとされています。
このような 「健康格差」 を解消し、所得によって健康状態が分かれる現状を変えようと、行政でもさまざまな取り組みが行われています。
気づかないうちに健康へ近づいている?
足立区の “野菜が食べやすくなる環境づくり”
全国でも積極的な動きを見せるのは東京都の足立区。同区の健康寿命は都や国の平均よりも約2歳短いと調査で明らかにされました。その要因は 「糖尿病に関わる医療費」 が23区でワースト1位、つまり糖尿病患者やその予備軍がもっとも多い点にあることとし、そこでその数を減らすことを目標としたプロジェクト 「あだち ベジタベライフ」 が開始されました。
当プロジェクトは糖尿病予防に効果があるとされる野菜摂取量を増やすため、 “野菜が食べやすくなる環境づくり”? を進めるというものです。具体的には飲食店の協力を得て、野菜をたっぷり使用したメニューやベジファーストメニュー (食前にサラダを出すなど) を提供したり、区のホームページや SNS で簡単な野菜レシピを発信するというものです。また、子どものころから良い食生活習慣を身につけるために、小中学校などで野菜中心の献立を提供する「野菜の日」を設けたり、 「一口目は野菜から」 という声かけを実施しました。
うどん県・香川で野菜摂取量アップを目指す
「ヘルシーうどん店」 マップ
こうした取り組みは従来の健康啓発に終わらないところがあります。たとえ住民の健康に対する意識が低くても、 “いつの間にか” 健康に近づける環境を整えておく、これによって足立区は一人あたりの野菜消費量が年間で5kgも増えたといいます。
足立区が糖尿病に関わる医療費において、23区ワースト1位となったことを契機とし、 「あだち ベジタベライフ」 を開始したように、かつて全国で糖尿病受診率においてワースト1位となってしまった香川県でも、それを克服する取り組みを行ってきました。
「うどん県」 として有名な香川県ですが、その一方でうどんに天ぷらやおにぎり、いなりずしを添えることで、炭水化物や脂肪の過剰摂取に陥ってしまう可能性も指摘されています。そこで香川県はうどん店での野菜摂取量アップを目指した 「ヘルシーうどん店マップ」 を作成・配布しました。また、野菜の小鉢を添えたりサラダうどんを選ぶよう呼びかけるなど、ヘルシーなうどんの食べ方を紹介しており、県独自の健康環境づくりを続けています。
健康格差が生じる背景には、所得や食文化などの個人だけでは改善しづらい理由が含まれています。足立区や香川県での取り組みは、意識改革と同時に健康へ配慮できる選択肢を提供しており、地域ぐるみで住人の健康を守る取り組みの好例として評価されています。
■ 参考
足立区 公式HP
NTTレゾナント gooニュース
株式会社マイナビ マイナビニュース
香川県 かがわ糖尿病予防ナビ
株式会社創新社 健康指導リソースガイド