福井大学らの研究チーム、糖尿病性白内障を抑える物質を世界で初めて特定
福井大学大学院工学研究科ならびに同大医学部の研究チームは、糖尿病による白内障の進行を抑える化合物を世界で初めて突き止めたことを発表しました。現状では発症後に手術でしか治療ができませんが、予防薬の開発につなげ、将来的には予防用点眼薬の開発が期待されています。
なお糖尿病性白内障は糖尿病による合併症の一つで、凸レンズの役割を果たす水晶体が混濁する病気で視力が低下していくもの。一般的な白内障は主に高齢者に多く発症例がありますが、糖尿病を原因とする場合は比較的若年であっても現れ、年齢を問わず進行しやすいとされています。「gooヘルスケア」 によると、高血糖からくるポリオール代謝経路の亢進(こうしん)、酸化ストレス、終末糖化産物(しゅうまつとうかさんぶつ)の蓄積などが原因で水晶体蛋白が混濁するものと思われますが、その詳しいメカニズムはまだ明らかではありません。
白内障とエピジェネティクスを結び付けた新たな研究アプローチ、さまざまな発展が期待される
今回、研究チームでは、同じ患者であっても左右の目で症状に違いが見られることに注目。DNAの配列は同じでも、後天的な影響で遺伝子の働きが変わる 「エピジェネティクス」 という現象に焦点を充てて解析しました。そこでラットを用いた実験で糖尿病による白内障を引き起こし、白く濁った水晶体にエピジェネティクスの動きを阻害する化合物(阻害剤)を加えたところ、白濁が抑えられることがわかりました。26種類のうち10種類で発症を抑える効果を確認することができました。
今回の結果から研究チームは特許を出願し、目薬の開発など創薬を目指して協力企業を募っていきます。
手術という負担のかかる治療法しか存在しなかったことや、発症前に予防が期待できるなど新薬が開発されれば大きな恩恵が期待されています。
■ 出典
株式会社読売新聞グループ本社 YOMIURI ONLINE
株式会社福井新聞社 福井新聞オンライン
エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社 gooヘルスケア