【第9回】歯周病と虚血性心疾患〜知って良かった!歯と健康のお話〜

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【第8回】の掲載まで、歯周病と糖尿病の関連についてお話しました。

▶【第8回】糖尿病と歯周病の相互関係(まとめ)〜知って良かった!歯と健康のお話〜

今月は歯周病と虚血性心疾患との関連についてお話します。

 

歯周病と虚血性心疾患との関連について

近年、動脈硬化や心血管疾患の発症に軽微な慢性炎症の関与(炎症性サイトカインやCRPなどの炎症性物質)が注目されています。

歯周病は歯周病細菌による感染症であるため、軽微な慢性炎症が長期に持続することになります。

そのため、歯周病の炎症が起こっている場所でされた炎症性物質が血液中に運ばれ、動脈硬化や心血管疾患の発症の危険因子の1つとなる可能性が考えられます。

さらに、動脈硬化の患者さんの血管壁から歯周病細菌が検出されたとの報告もあります。

また、ある種類の歯周病細菌は頸動脈や冠状動脈の糊状硬化(血栓)の形成になんらかの影響を与えていることもわかってきました(図1)。

 

(図1)歯周病と7つの病気 永末書店より抜粋

 

以上のことから、歯周病が虚血性心疾患のリスクを上げる明確なメカニズムはまだはっきりとは解明されていませんが、何らかの影響を与えていることは確かなことなのです。

逆に、歯周病の治療をすることにより血管内皮の弾性が改善し血管内皮細胞の機能改善がみられたとの報告があり、歯周病の治療が虚血性心疾患の改善を導くという可能性もあるのです(図2)。

 

(図2)さかえ○○年3月号  時事通信出版局より抜粋

 

歯周病と虚血性心疾患は密接に関連!

付け加えて、虚血性心疾患の患者さんの多くは血を止まりにくくする薬を飲んでいると思います。

以前は抜歯など出血を伴う治療の時にはお薬を一時的に止めることがありました。

しかし、いろいろな調査研究から、良好な状態が維持されている虚血性心疾患の患者さんにおいて歯科治療での危険性はきわめて低いことがわかっています。そのため、休薬をせず適切な処置をすれば確実な止血ができると考えられています。

逆に、休薬をすることによってその反動で血栓を引き起こしやすくなる危険性があります。

一見、口と心臓は離れた場所にあるため関係ないと思われますが、歯周病と虚血性心疾患は密接に関連しているのです。

次回は歯周病が影響を与えるその他の疾患についてお話しします。

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栗原幹直(くりはら みきなお)

徳島大学歯学部卒後、岡山大学歯学部歯周病態学講座入局。2004年広島県三原市に「くりはら歯科医院」を開業。日本歯周病学会歯周病専門医、日本糖尿病協会登録歯科医、1型糖尿病患者専門受け入れ歯科医院。

 

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