【第12回】歯周病の治療(2)中等度・重度歯周炎~知って良かった!歯と健康のお話〜

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中等度以上の歯周炎の治療とは

歯を支えている骨が破壊された中等度以上の歯周炎の治療は、前回の軽度歯周炎の治療に加え、徹底した歯周ポケット内深部の感染源除去および、再び細菌感染が起こらない口腔内環境を作ることです。

さらに、局所増悪因子(偏った咬合力、不良な被せ物、歯ぎしりなどの悪習癖、歯の形態、悪い歯並びなど)をできる限り取り除くことも必要です。そのためには、抜歯が必要なこともありますし、歯肉に麻酔をして歯周ポケット 内深部の感染源を取り除く治療を行います。さらに、骨の破壊が進んでいる場合には歯周外科処置(右図)を行います。

歯周外科処置は局所麻酔下で歯肉を剥離して行う手術です(下図)。処置内容で異なりますが、大体外来で1~2時間で行います。

 

歯周外科処置の目的

歯周外科処置の目的は、

(1)感染源の除去:深い歯周ポケット内や歯根のくぼみ内の感染源除去
(2)歯根部増悪因子の除去:歯根面の溝の平坦化や分岐している歯根(主に大臼歯)の分割
(3)歯周組織再生:破壊された歯槽骨や歯根膜の再生
(4)審美的要求:歯ぐきの退縮や歯根露出に対して、他の部位の歯肉を移植

今までの歯周外科処置では破壊された歯槽骨や歯根膜を完全に再生させることは残念ながら不可能でした。
しかし、これからの医学は再生医療へと進んでいます。歯科においても再生医療の研究が進んでいます。
現在では、全ての人に行うことはできませんが、全身状態や骨破壊の状態(歯周病の重症度)により歯周組織再生手術が行われています。

次回は保険内で行える歯周組織再生手術についてお話しします。

 

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栗原幹直(くりはら みきなお)

徳島大学歯学部卒後、岡山大学歯学部歯周病態学講座入局。2004年広島県三原市に「くりはら歯科医院」を開業。日本歯周病学会歯周病専門医、日本糖尿病協会登録歯科医、1型糖尿病患者専門受け入れ歯科医院。

 

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