メインテナンスの大切さ
これまで、歯周病と全身疾患との関わり、歯周病の治療についてお話してきました。
実は、一通りの歯周病治療が終了しても、本当の意味での歯周病治療は終了していません。
なぜなら、大部分の歯周病は生活習慣病であるため、再発しやすい病気だからです。
口の中の細菌は綺麗にブラッシングしても完全にゼロにすることはできず、常に口の中では感染と防御が繰り返されています。
歯周病の治療後は歯周病細菌が少なくなっていても、日々のブラッシングが不十分であったり、定期的なメインテナンスを怠ると再び細菌が歯周ポケット内で増殖し、再発を起こしやすくなるのです。
そのため、日頃の自身でのホームケアと定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケア、つまりメインテナンスが大切になってくるのです(図)。
(図)参考:新 歯周病をなおそう 砂書房
メインテナンスの目的
メインテナンスの主な目的は、
(1)再発の早期発見と治療
(2)ブラッシングのチェック
(3)個々のリスク因子(歯並び、かみ合わせ、歯ぎしり、喫煙、全身疾患など)を考えた予防管理
(4)専門家によるクリーニング(バイオフィルムの除去)
口の中の細菌はバイオフィルム(虫歯菌や歯周病菌の集合体)を形成し持続的に感染を起こします。
バイオフィルムは歯面に強固に接着し、歯磨きではなかなかとれません。
さらに抗生剤や洗口剤も効果的ではありません。
細菌は磨きにくい場所(歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、かぶせ物の周囲、歯並びが悪い部位、深い歯周ポケットなど)で増殖します。
そこで、歯科医院での定期的なPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)が大切になります。
PMTCとは、専門家による機械を用いた歯の清掃という意味です。具体的には歯石除去やペーストを用いた機械的歯面研磨を行います。
さらに、フッ素などを効果的に使用し個人のリスクを考えて予防管理をしていくことです。
いつまでも自分の歯で食事や会話を楽しむためにも、かかりつけ歯科医院で相談して各自に合った予防管理を行いましょう。
最終回のごあいさつ
一昨年の11月から始まった連載も今月号で最終回となります。
連載にお付き合いくださいましてありがとうございました。
今回の連載は「歯周病と全身との関連について」を中心に書かせていただきました。
読んでくださった方々に少しでもお役に立てていれば幸いです。
〔日本歯周病学会〕
歯周病専門医 栗原 幹直 (くりはら歯科医院)
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栗原幹直(くりはら みきなお)
徳島大学歯学部卒後、岡山大学歯学部歯周病態学講座入局。2004年広島県三原市に「くりはら歯科医院」を開業。日本歯周病学会歯周病専門医、日本糖尿病協会登録歯科医、1型糖尿病患者専門受け入れ歯科医院。