横浜市立大学の研究グループが「血管網を有する膵島作製」に成功!

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横浜市立大学 学術院医学群 臓器再生医学 谷口英樹主任教授らの研究グループが「血管網を有する膵島」(血管化膵島)の創出に成功し、今後効率的な膵島移植法の開発が期待されます。

 

■ 背景

1型糖尿病のインスリン離脱の方法として膵島移植があります。点滴による移植となるため、膵臓移植のような開腹手術が不要であることがメリットですが、複数回の移植手術が必要となるなど、移植した細胞の生着率が低いことが課題とされていました。

谷口英樹主任教授らのグループは、2017年12月6日にも「ヒトiPS細胞からミニ肝臓の大量製造に成功―再生医療への応用を大幅に加速―」という発表を行うなど、血管網を有した立体的なミニ肝臓の作製手法を開発しています。

今回の研究発表では、ミニ肝臓作製の手法を膵島に応用し、血管網をもつ膵島を作製することに成功するとともに、劇症1型糖尿病モデルマウスへの移植によりその生存率が優位に高く、有効であることを示しました。

 

■ 研究成果のポイント

横浜市立大学より引用(https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/20180509Takebe.html

〇さまざまな臓器の微小組織片を用いて、血管網を導入する培養系を確立

〇血管網を導入することによりマウス・ヒト膵島の機能が向上することを確認

〇血管化したマウス膵島移植により糖尿病モデルマウスの治療効果を大幅に改善

 

■ 研究について

膵臓から分離した膵島 + 血管内皮細胞 + 間葉系缶幹細胞(様々な細胞に分化する能力をもつ細胞)

上記三つの細胞を3次元的に培養(シャーレなどとは異なり、専用の容器で立体になるように培養)することで血管網を有する膵島の作製に成功し、その血管内を血液が流れていること、また膵島単独よりも血管網を有する膵島(血管化膵島)の方が多くインスリンを分泌することがわかりました。

 

■ 結果

膵島と血管化膵島をマウスにそれぞれ移植したところ、血管化膵島は移植後に血管数が増え、膵島単独で移植したものよりも血管ネットワークが豊富に構築されました。

また、劇症1型糖尿病モデルマウスに膵島と血管化膵島をそれぞれ移植すると、膵島を単独で移植したマウスの生存率が40%であったのに対し、血管化膵島を移植したマウスの生存率は90%と大変大変高い値を示しました。

 

■ 今後の期待

血管化膵島の移植方法が既存の膵島移植と同様になるのか、移植部位がどこになるのか、など臨床応用されるまでにはまだ様々な研究が必要となると思いますが、移植した細胞の長期生着という課題を改善させる素晴らしい結果です。

 

同様の手法を用いることで、膵島だけでなくさまざまな臓器より抽出した組織においても血管網を有する立体的な構造をもつ組織を作成可能であることが示されています。今後の再生医療の進展を大きく加速させる研究だといえるのではないでしょうか。

 

■ ご支援くださった皆様、研究者の皆様へ

2010年度に1型糖尿病患者・家族をはじめとした支援者の皆さんの寄付により、谷口先生へ100万円の研究助成を行い、その成果がこのような素晴らしい形で実を結んでいます。ご支援くださる皆様、また日夜研究を進めてくださる谷口先生をはじめとした研究者のみなさまに改めてお礼申し上げます。

テーマ:ヒト膵細胞を用いた血管構造を有する膵島創出法に関する臨床応用技術の開発

研究者:谷口 英樹(横浜市立大学大学院医学研究科 教授)

助成金:100万円

 

■ 関連リンク

血管ある膵島組織作成 糖尿病のマウスに効果 横浜市大|朝日新聞

移植用の膵臓、血管網でき定着度向上 横浜市大が作製|日本経済新聞

移植用膵島に血管網=定着率高める新技術-将来iPSから作製・横浜市大|時事通信

(大村あずさ)

 

 

 

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