【ネイルやつけまつげをしていると入れない】バイオ人工膵島移植のCPC(細胞加工施設)ではどんなことをしているの?

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1型糖尿病の根治に最も近いと言われる「バイオ人工膵島移植」は、膵臓移植や膵島移植の課題である「ドナー不足」「免疫抑制剤の服用」を解決するために、医療用のブタの膵島を特殊なカプセルに包んで移植する方法です。

バイオ人工膵島移植ってなに?という方はぜひこちらのページをご覧ください。

バイオ人工膵島は「ブタの膵島を特殊なカプセルで包む」という過程が必要であり、その加工を行うのが細胞加工施設(Cell Processing Center、以下CPC)です。

多くの方からいただいたご寄付により、2019年3月、国立国際医療研究センター内にCPCを建設することができました。

バイオ人工膵島移植にはCPCが必要であること、そこで移植に必要な作業をすることはなんとなくわかっていましたが、実際にどのようなことをするのか、そしてまだ不足しているものがあるのかを、国立国際医療研究センター研究所の霜田雅之先生にうかがいました。

CPCはヒトに移植する細胞を加工するため、入室する際には「一方通行」「つけまつげはダメ」などのルールもあるのだとか。日ごろ知ることのない、興味深いお話をどうぞご覧ください。

 

お話をうかがった人:霜田雅之先生

国立国際医療研究センター病院 膵島移植センター センター長/国立国際医療研究センター研究所 膵島移植企業連携プロジェクト プロジェクト長

プロフィール
1998年京都大学医学部卒業、外科医として修練したのち2008年京都大学大学院医学研究科修了、2007年より米国ベイラー大学メディカルセンター研究員を経て2012年より国立国際医療研究センター研究所膵島移植プロジェクト長、2022年4月より現職

休日の過ごし方
読書、子どもの相手、たまにスポーツやキャンプ

研究室や運営するホームページ
http://www.ncgm.go.jp/080/suitou.html

 

CPCではどのような作業をしていますか?

現在は予備的な実験や作業(バイオ人工膵島の製造ができるかのスペックの確認など)をしていて、以下の本格的な作業のための準備をしています。

<今後の使用計画>

  1. 実験室レベルでバイオ人工膵島の製造工程を確立
  2. 1のあと、CPC内で実際の本番と同じようにバイオ人工膵島を製造
  3. 2で作製したバイオ人工膵島の品質を動物実験や試験管内で行う前臨床試験で評価する
  4. 改善が必要な場合(たいてい1度では完璧にはならないので、改良が入ります)は改善を繰り返してデータを取る
  5. 再生医療法に基づく申請の承認後、本番である患者用のバイオ人工膵島もCPC内で製造し、移植に用いる

今後どのような機器が必要で、どのような作業をしますか?

現在100万円以上するような大型機器はほとんどすでに購入ずみですが、逆に数十万円以下の小さな機器はまだあまり無く、今後購入する必要があります。

  • 保存用液体窒素装置(100万円以上)
    かなり古いものしかないので、故障が懸念され、新たに購入を希望しています。
  • ペリスタポンプ(膵臓の細胞をバラバラにする酵素溶液を、一定量注入し続ける際に使用する器具)
  • 温度計
  • 比重計
  • 重量計
  • 滅菌装置
  • パソコン
  • 吸引装置 など

入室時のルールはどのようなものがありますか?

  • 頭から足先まで覆う無塵衣をつける
  • 体調良好であること
  • 閉所恐怖症でないこと
  • 揮発性の香料などはつけない
  • ネイル(手袋に穴が開く)やつけまつげ(落ちるとまずい)などはしない
  • 飲食禁止
  • CPCの中にはトイレがないので、一旦出て消毒や無塵衣の着衣から入り直す
  • バイオ人工膵島を製造する部屋は入り口と出口が異なり、一度出たら再度入り口から入りなおす必要がある。
    CPCは複数の部屋からなっており、最も清浄度が高いバイオ人工膵島を製造する部屋は一番奥にあります。この部屋は動線が一方通行になっていて入口と出口が別になっています。ごみを出したり、ちょっとしたことで出口から出た場合は思わずそのまま戻りたくなりますが、それは禁止で一旦完全に出て入り口から入り直す必要があります。もっと手前で清浄度が低い部屋は、出入り口が一つの場合もあります。
2019年11月に行った研究室訪問時の様子

おわりに

移植用のバイオ人工膵島をつくるためには、無菌室の中でさらに厳重な管理のもと作業をされていること、ヒトに移植するためのバイオ人工膵島をつくるためにはまだまだ器具や実験が必要なこともわかりました。

現在日本IDDMネットワークでは、バイオ人工膵島が治験(臨床実験)まで到達するための資金を集めるために、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで寄付を募っています。

患者が希望すれば、日帰りで手術が受けられる

そんな未来を実現するために、みなさまからのご支援をよろしくお願いいたします。

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